刑裁サイ太のゴ3ネタブログ

他称・ビジネス法務系スター弁護士によるニッチすぎる弁護士実務解説 TwitterID: @uwaaaa

「登記情報提供サービス」と「登記簿図書館」で無料で出来ること・有料で出来ること

はじめに

 色々ありましたが,初心に立ち返って,弁護士業務の解説をしようと思いまして,このテーマを取り上げました。
 標題の「登記情報提供サービス」と「登記簿図書館」について語ります。
 あちこちで布教しているのですが,あまり広がっているように思えません。
 そこで,皆さんにご紹介するために筆を執りました。なお,私には本記事を執筆したことにより一銭も入りませんのでどうぞご安心ください。べ,別に泣いてないのでどうぞご安心ください。

登記情報提供サービス

概説

 電気通信回線による登記情報の提供に関する法律(平成11年法律第226号)の第4条第1項の業務を行う者(指定法人)に指定されているのが「一般財団法人民事法務協会」で,その「一般財団法人民事法務協会」が運営しているのが「登記情報提供サービス」です。
www1.touki.or.jp
 ざっくりと言うと,不動産登記,商業登記,動産・債権譲渡登記をネットで閲覧できます。
 費用は登記1件334円です*1。図面や公図なども364円で取れます。
 一時利用もできるのですが,IDを登録してクレカ払いで利用するのがおすすめです*2
 こうして得られる登記情報等はpdfファイルでダウンロードできます。
 不動産登記情報のpdfをアップすると,自動的に訴訟等で用いる物件目録を出力してくれるという「物件目録ジェネレーター」というサービスがクッソ便利です*3
www.houbox.net
 ただ,法務局で取得する登記簿とは異なり,公印や証明文が付与されず,公的な証明力はないとされています。

当サービスは,登記情報請求を行った時点の登記内容を確認することを目的としたサービスです。したがって,印刷しても登記官の認証文や登記官印が付されておらず,法的な証明力はありません。
https://qa.touki.or.jp/faq/show/106?back=front%2Fcategory%3Ashow&category_id=3&page=1&site_domain=open&sort=sort_access&sort_order=desc

 ですので,訴状等の附属書類としては使えないと考えた方がよさそうです。他方で,経験上,証拠として使っていて特に咎められたことはありません。

不動産

 不動産登記簿を取る場合,分かっている地番を特定して取得するのがオーソドックスな方法です。
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 建物の場合は土地の地番からその上に建物を特定する方法もあります。
 詳しい地番が分からなくても地番の範囲(たとえば「1-5から1-15の間で存在する地番」みたいな検索ができたりします。)で検索する方法があり,便利です。
 もっと便利なのが「地番検索サービス」です。要はブルーマップが見られるサービスです。
 ブルーマップを表示でき,ブルーマップ上に記された地番を選択してコピペすれば簡単に地番を選択して登記を請求することが出来ます。
 たとえば,私の自宅の最寄り駅を表示した結果はこんな感じです。
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 ただ,地番が表示されるのは都市部だけで,地方だと表示されない場合も多いです*4
 これを駆使するとブルーマップ上で建物の位置を特定して,その地番を選択して,その上に立つ建物の登記が取れるわけです。実際,この方法でUSJ内のホグワーツ城を特定したことがあります。
 何よりも凄いのは,このブルーマップを表示するまでは無料だということです。これはこれで,地図として色々な用途に使えます。

商業登記簿

 商業登記簿では,組織形態(株式会社とか弁護士法人とか)の部分を除いた商号名称・読み仮名検索が可能で,前方一致・部分一致・完全一致で検索できます。 
 たとえば,全国から「うんこ」で前方一致で検索すると,このような検索結果が表示されます。
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 ここでも,この検索結果を表示するまでは無料です。この段階でも,法人番号や所在地が表示されます。ここまで無料で出来るのは大きいです。このおかげで面白法人がいくらでも検索し放題です。
 ここから会社を選んで,登記簿を取れます。不祥事が起こった場合に会社や法人の代表の住所を調べて家賃を探したりしているとすぐに数千円単位で課金されてしまうので要注意ですよ。

そのほか

 気になったその場で,PCやタブレットがあればすぐに登記情報を調べることができるのが強みです。
 ただ,いつでも使えるわけではなく,平日の午前8時30分から午後9時までしか使えません*5
 総じて,公的なサービスという安心感と痒いところに手が届かないUIという印象があります。
 いずれにしても,有用なサービスです。

登記簿図書館

 株式会社登記簿図書館が運営するサイトです。
xn--lcss68alvlysfomtekv.com
 こちらも不動産登記簿情報を得られるサイトです。登記情報提供サービスと決定的に違うのはサイトのどぎつい見た目だけではありません。
 登記簿図書館を経由して登記情報提供サービスから登記を入手できるのですが,その場合,333円と,普通に取得するよりも1円も安いです!!!!!!
 私のようにたまにお遊びで登記情報を取得する人間からすると,1円の違いは微々たるものですが,大量の登記を取得する人にとっては大きいことでしょう。そういう感じで,本来のターゲットは士業ではなく,金融機関や不動産業者ではないかと思われます。
 そのように取り付けた登記簿は,逐一,登記簿図書館側が保存しており,それをデータベース化しています。そして,そのデータベースを全文検索できるというのがメインのサービスとなります。安くなっている1円の対価がコレというわけです。
 不動産登記,法人登記のどちらでもいわゆる「名寄せ」ができるというのは非常に強力です。たとえば全く手がかりがつかめなかった債務者の不動産を発見したり,消費者事件の相手方の名前で検索して過去に消費者庁から怒られが発生していることを突き止めたりするなどできます*6
 不動産登記の場合は,検索結果を表示するまではタダ。ここまででも不動産の所在くらいまでは表示されるので色々と分かります。検索した結果を表示するときに280円課金されます。他方で,法人登記は結果を表示するのにも件数に応じた課金が必要なのでご注意を。
 たとえばこんな感じ。一時期話題になった,建物の種類が「スプラッシュマウンテン」となっている不動産もこのように引っかかります。ここまではタダ。
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 もうひとつ例をあげると,所有者を「東京弁護士会」で検索すると,弁護士会保有するはなさき記念館や,北千住・八王子の法律相談センターの箱が出てきます(完全一致検索ができないので一弁,二弁も含まれてしまうのはご愛敬。)。ここまでもタダ。
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 このようにして,著名な弁護士の名前で検索して,所在的に明らかに別荘地である不動産の所有関係を調べたりするのがタダでできてしまう,ゲスな俺たちにとっては神サービスです。
 ここまで,月額基本料は無料のプランでできます。そのほか,登記に変更があるかどうかを監視してくれるサービスなども有償で行っています。お役所仕事の登記情報提供サービスと違って,データベースからの検索であれば365日24時間使えるのも嬉しいです。


 全文検索といっても,結局は登記簿図書館経由で登記が取得されたものに限られるので,およそ全ての情報が網羅されているわけではありません。なので,どんどん会員を増やして,どんどん登記簿図書館経由で登記を取得して,どんどんデータを蓄積させる。そうすることによってますます情報が手に入りやすくなるということになっています。ということで仲間を増やしたいというのが本稿を書いている理由でした。
 登録が少々手間,UIが登記情報提供サービスよりも使いにくいような気がする点等がありますが,有用さを考えれば些細なことです。是非登録をお願いします。

まとめ

 みんなで登記簿図書館を使って,ワシのゲス検索をしやすくするように手伝ってくんろ。

*1:もはや狙っているとしか思えない値段設定です。

*2:法人だと引き落としも可

*3:某法クラ関係者のサービスです。

*4:地方でも県庁所在地レベルは網羅していると思いますが。

*5:土日に原稿が書けなくて困りました。

*6:いずれも実際に経験しました。