刑裁サイ太のゴ3ネタブログ

他称・ビジネス法務系スター弁護士によるニッチすぎる弁護士実務解説 TwitterID: @uwaaaa

統一教会に関する判例をたくさん調べてみた

はじめに

 先日のコミケ100はお疲れ様でした。厳戒態勢で行われたコミケ99よりも入場者が増えた影響か,台風直撃の中でしたが以前に近い活気を感じました。
 さて,コミケ100では,大嘘判例八百選[第15版]を上梓することとなりました。
 年月にして丸10年,伝説の補訂版や,総集編1~3,熱海特別号を含めて通巻20号ということとなりました。よくもこんなバカげたお遊びを続けているもんです。
 今回も,時流に乗ればネタに困らないとあって,世間を騒がせている統一教会についての判例も調べてみました。しかし,さすがに関係各所に迷惑がかかるとヤバいので,八百選シリーズとは全く無関係のコピー本として頒布しました。
 通例,コピー本の内容は,そもそもブログのコピペか,後日ブログ等で公開するようにしていますので,誤字脱字・「同上」とあるのに途中で裁判例を追加したせいで意味が分からなくなっていた点を修正した上,巻末コラムは削ってコピー本をお求めの方だけのお楽しみ要素にすることとしてアップします。
 以下にもあるとおり,コピー本の売り上げの約7割を,「全国霊感商法対策弁護士連絡会」にカンパする予定です。

原文の「はじめに」

 これまで,発禁モノ企画としてジャニーズ事務所に関する判例やディズニーに関する判例吉本興業に関する判例等を調べてきた当職であるが,ついにガチヤバ案件に手を出すこととなった。
 そう,今回はいわゆる統一教会に関する判例を調べてみることとした。団体や表記がいくつかあるようであるが,本稿では一貫して「統一教会」と表記することとする。政治,宗教,野球の3大タブーのうち(おそらくは)2つを踏み抜くような企画であり,これまで以上に公平な論評に努めたい。
 既に多くの裁判例「全国霊感商法対策弁護士連絡会」の公式サイトに掲載されている。これによれば統一教会側が敗訴している裁判例の蓄積が確認できる。ここでは,同サイトに掲載されていないもの,棄却事例や統一教会自体が当事者になっていないような特殊事例を取り上げることとした。
 なお,本コピー本の収益の一部は「全国霊感商法対策弁護士連絡会」にカンパする予定である。


  • 東京高判昭和55年3月4日判例時報979号64頁

 統一教会東京支部の家庭部長である請求者が,統一教会の信者である被拘束者について,精神病院に強制的に入院させられたとして親族らである拘束者に対して人身保護請求をした事案。
 被拘束者の同意を得たとの事実を認め得る資料が存在しない,精神障害者と診断されたと認められないことから,請求を認容して釈放を認めた。


  • 徳島地判昭和58年12月12日判例時報1110号120頁

 関係者が,統一教会の信者である被拘束者について,やはり家族が無理矢理自宅に連れ戻したとして人身保護請求をした事案。
 上記の事案とは異なり,請求を棄却した。その理由としては,被拘束者がなお未成年であり,拘束者の対応は幸福をひたすら願う慈愛に満ちたものに満ちたものであること,拘束の態様は緩和されており,被拘束者が一応の安定を見るに至っていること等が挙げられるであろうか。


  • 東京地判昭和61年7月22日判例時報1222号70頁

 原告は「宗教法人世界基督教統一神霊協会」。
 統一教会が,小学館が発行する週刊ポストの記事(早稲田大学の学長夫妻が統一教会の下部団体である原理研から永年に亘って苦しみを受けていたこと公表するもの)について名誉毀損であるとして慰謝料と謝罪広告を求めた事案。
 統一教会に関連する紛争において作成された,学長夫人の署名押印のある「御願い書」が統一教会側に偽造されたかのような記事であったことからこの点について真実性・相当性の抗弁の問題となったが,常識的観察によっても本件御願い書の署名が自署と別個であると認められること等から,相当性の抗弁を認めて請求棄却。


  • 東京地判昭和62年6月15日判例時報1243号54頁

 ある女性から新潮社に対する損害賠償請求の事案。
 原告の主張では,米紙で合同結婚式で結婚してその後まもなく離別したという女性を取材しようとしたフォーカス誌の取材班が,原告を当該女性であると勝手に断定した上で「統一教会を抜けた方が良い」などと暴言を吐き,望遠レンズで盗み撮りし,記事において合同結婚式で結婚した当該女性として原告の写真を掲載したというものである。
 同一人物であるかより一層の念を入れた確認作業をしなければならない注意義務を怠ったとして,請求認容。


  • 東京地判平成2年11月7日判例時報1369号125頁

 原告は国際勝共連合
 統一教会が,日本社会党(当時)の機関誌の記事について名誉毀損であるとして慰謝料と謝罪広告を求めた事案。
 いわゆるレフチェンコ事件について,統一教会と米CIA等の右翼勢力が仕組んだ謀略などという記載が問題視された。日本社会党側の真実性・相当性の抗弁を認めず,請求を認容した。認容額は100万円。


  • 福岡地判平成5年10月7日判例時報1483号102頁

 統一教会が主催する合同結婚式において結婚したとされた日本女性の原告と韓国男性の被告とが婚姻の効力をめぐって争った事案。
 合同結婚式後,研修中にわずかに面会をする等があったものの,原告が帰国後には電話や手紙を交換する程度の交流しかないまま,統一教会側から婚姻届をするように指示が来たために婚姻届を提出したという事実関係である。統一教会の教義によれば,合同結婚式後3年が経過し,女性が33歳(原告は合同結婚式当時27歳)に達していなければ同居・性関係を持つことが出来ないとされていた。
 裁判所は,婚姻届を提出した時点での実質的婚姻意思を否定し,また,合同結婚式を6年後の夫婦関係を設定する合意と見ても婚姻意思はなかったとして,婚姻無効の請求を認容した。


  • 名古屋地判平成7年2月17日判例時報1562号98頁

 本件も,合同結婚式を巡る婚姻無効確認請求訴訟である。
 本件では国際裁判管轄が争点となった。韓国では婚姻の届け出が出されておらず跛行婚となっていたことから韓国においては争訟手段がないため,日本の裁判所に国際裁判管轄を認めた上で,請求を認容した。なお,当時の「法例」には婚姻無効の場合の規定がなかったが,現在の「法の適用に関する通則法」では25条で明文をもって定められており,現在はこの論点は解消している。


 弁護士である被告(代理人がいつメンなので,おそらく連絡会関係の弁護士)が,交渉中に原告に提出した書面や,原告が申し立てた懲戒請求・本訴において提出した書面において,統一教会の資金集めのための霊感商法であると断定して原告の名誉を毀損したとして提訴された事案。
 被告において,被害の態様(家系図を作って先祖の因縁を語り高額な念珠・印鑑等を次々と売りつけて原理講義を受けさせた等)と統一教会による霊感商法の知識とを合わせて推認したものであり,統一教会支部の幹部に対する通知書を送付後,原告が支部の幹部の窓口を務めていたこと等から,被告の判断は不合理なものとはいえず,不法行為は成立しないとした。


  • 名古屋地判平成10年3月26日判例時報1679号62頁

 事件名が「青春を返せ名古屋訴訟判決」。
 元信者である原告が,被告である統一教会にマインドコントロールによる違法勧誘・教化行為により1年ないし6年間にわたり貴重な青春を奪われ,霊感商法等への従事や無償労働献金等の出捐を強制された後,棄教した上で,人格権及び財産権を侵害した不法行為による損害賠償を求めた事案。
 本件では請求は棄却された・・・のであるが,統一教会に対する請求が認容される例はこの当時は少なく,統一教会側も敗訴的和解を受け入れる等していたが,平成12年前後から請求を認容する最高裁判決が次々に出され,潮目が変わっていった。


  • 東京地判平成14年3月8日消費者ニュース別冊(宗教トラブル特集)161頁

 統一教会の信者である者とその婚約者が原告となり,信者の両親と脱会活動を支援している牧師を被告として,棄教のために原告を拉致監禁するなどしたとして提訴した事案。
 損害賠償請求権を発生させるほどの違法性を帯びた行為であったとまでは認められないとして請求棄却。
 なお,本提訴が統一教会と関係があるかは不明であるが,原告代理人統一教会代理人を務めたこともある弁護士であった。


  • 横浜地判平成16年1月23日裁判所HP

 概ね同上。
 裁判所HP出典なので代理人は不明。


  • 東京地判平成15年9月8日新日本法規提供

 自民党の幹事長職にあった山﨑拓氏が原告となり,「統一教会の関係者であった女性と愛人関係にあった」という記事を書いた被告である週刊文春を提訴した事案。
 女性の住民票上の住所が統一教会関連施設であった,原告が女性の居所に,2ヶ月に5回の頻度で夜,1人で通っており人とすれ違うたびに茶封筒で顔を隠していたこと,原告に突撃取材をして確認していること,統一教会本部にも取材をしていることなどの緻密な取材をしていることを指摘して,「統一教会関係者」「女性と愛人関係」のいずれにも真実性・相当性の抗弁を認めて請求棄却。
 なお,原告が本件記事が掲載後,報道機関から批判を浴びたが本訴を提起して裁判中であることを理由に釈明を行わず,原告本人尋問を行わず陳述書すら提出しない姿勢が訴権の濫用に当たる,という被告の主張は排斥されている。


  • 東京地判平成16年10月4日新日本法規提供

 従業員持株会を退会した原告らが,持株会を被告として,規約に従った清算金と実際の払戻しとの差額の支払いを求めた事案。
 これらの株に係る会社について,「統一教会系企業である株式会社ハッピーワールド代表取締役代表取締役を務めていたこと」や,「統一教会が本件会社に統一教会系企業としての活動を求めたり,経営について要求を行うようになったが,これをはねつけて退会を宣言した」等の事実が認定されている。その中で,信仰を優先する信者従業員等に対して解雇等が行われ,その時の価格が清算金の算定に当たって考慮されているようである。
 時期と経緯に照らすと,ペンタブで著名な株式会社ワコムではないかと思われる。


  • 佐賀地判平成26年4月25日判例時報2227号69頁

 国立大学被告1の准教授である被告2が,原告1の信仰を軽蔑・侮辱する発言を繰り返して原告の信仰の自由及び名誉感情を侵害した,また,被告2が原告1の両親である原告2らが合同結婚式を通じて結婚したことについて「おかしい結婚」「犬猫の結婚」などと申し向けて名誉感情を侵害したとして,被告らに対してそれぞれ慰謝料の支払いを求めた事案。
 被告1に対する慰謝料は認め(ただし,原告1に4万円,原告2らに計4万),被告2に対する請求は国賠法1条1項の趣旨から棄却された。