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刑裁サイ太のゴ3ネタブログ

他称・ビジネス法務系スター弁護士によるニッチすぎる弁護士実務解説 TwitterID: @uwaaaa

国選弁護事件で稼ぐ方法

はじめに

 裁判官をして「国選弁護人に選任せられることが比較的低廉な報酬を受けるだけで高度の弁護活動を要求せられることとなる点において弁護士にとつてひとつの強制的な負担であるとしても,これは弁護士の公共的職業者たる性格に随伴する責務として甘受さるべき」(東京地裁昭和38年11月28日判タ155-138)とまで言わしめる国選弁護活動。
 しかし,昨今では食い扶持に困った弁護士が国選弁護に群がるような状況があるやに聞いております。このような状況では,どうやって稼ぐか考える弁護士が現れかねないです。
 ということで,どうやって稼ぐか考える弁護士がここに現れましたので,以下稼ぐ方法を述べていきたいと思います。

おことわり

 客観的には,弁護人として恥ずべき行為を推奨するようにも見えるかも知れないので念のために最初に声を大にして言いますが,
 【本エントリで当職が訴えたいのは,法テラスの基準がおかしいという現状に対する壮大な皮肉です。】
 ですので,「弁護士の品位を貶めるクソ弁護士」「懲戒されろ」「イケメンモテモテリア充弁護士爆発しろ」などという批判は勘弁してください。
 当職をはじめ,多くの心ある弁護士は,国選弁護の報酬が安いことを知りながら,それでもなお被疑者・被告人の権利擁護のために全力で戦っています。しかし,このような制度では,被疑者・被告人の権利を擁護するインセンティブが働かない。そう思って筆を執りました。


ところで国選の報酬ってどうやって決まるの?

 もともと国選弁護人に対する報酬は裁判所が定めていましたが,総合法律支援法の施行に伴い,国選弁護人指名業務及び報酬算定業務は日本司法支援センター(以下,「法テラス」といいます。)に移管されました。
 そして,総合法律支援法36条1項にいう契約約款(http://www.houterasu.or.jp/cont/100555393.pdf pdf注意)により,国選弁護報酬が算定されます。具体的には,「国選弁護人の事務に関する契約約款」の別紙の「報酬及び費用の算定基準」(上記pdfの38頁目以降)により細かく定められています。
 以下では,それぞれ「契約約款」「基準」と呼ぶこととします。
 

国選弁護活動の始まり方

 国選弁護には大きく2つあります。被疑者国選と被告人国選です。
 配点の方法は,原則として待機日方式が採用されています。待機日に勾留された被疑者や被告人が起訴後に弁護人の選任を希望した場合に,待機している弁護士に順次配点されていく方式です。もっとも,拒否権はありますので,マズい事件が来たら拒否しちゃいましょう^^
(註:契約約款7条3項にいちおう承諾義務が規定されています。努力義務ですが・・・。)

 美味しい事件は,否認していなければやることが少ない薬物事件ですかね。後述する被害弁償ボーナスを稼ぐには窃盗や傷害あたりがいいでしょうかね。
(註:うーん)

 大規模会を中心に,上記の待機日方式と並行して,法テラスに出頭して抽選で配点を受ける方式も採用されています。これだと事件のえり好みができないのでバクチになりますね^^;
(註:上告審の国選だと楽,とかいろいろあるんでしたよね?)

 また,当番弁護から国選弁護人就任というルートもありますが,そうすると当番弁護の派遣費用が儲かりますね^^ どうせ当番弁護で行っても私選の受任は期待できないし,被疑者援助なんて安い制度使わずに国選弁護ルートを積極的に狙っていきましょう^^
(註:被疑者援助を使うと当番弁護の派遣費用が出なかったりすることもあるようです。また,国選対象事件の場合は勾留後は被疑者援助使えないみたいですね。ここらへんの制度が複雑怪奇な状況であることも,今後ブログのテーマに据えたいと思っています。)

 いずれにしても,国選弁護がこのようにして始まります。さーて稼ぐぞー(^o^)

被疑者国選での稼ぎ方-通常報酬

 被疑者国選のベースの報酬は【2万6400円】です。これと接見回数に応じた基礎報酬を合わせて「通常報酬」となります。
 基本的に,初回接見以降の接見回数1回につき2万円が加算されます。ただ,弁護活動日数に応じて接見回数のキャップがあり,接見の報酬が徐々に2万円から逓減していき,順次1万円,6000円,以降は4000円になり,最終的にキャップに引っかかります。

 具体的には,弁護期間が10日の場合は,
初回接見      0円
2回目 +2万0000円
3回目 +2万0000円
4回目 +1万0000円
5回目 +  6000円
6回目 +  4000円
7回目 +  4000円
8回目以降     0円
となります。ベースと合わせるとマックスで8万6400円まで行けます。3回にとどめるのが最も効率がいいですね。


 弁護期間が20日の場合は,
初回接見      0円
2回目 +2万0000円
3回目 +2万0000円
4回目 +2万0000円
5回目 +2万0000円
6回目 +1万0000円
7回目 +  6000円
8回目~15回目
    +  4000円
16回目以降    0円
となります。ベースと合わせるとマックスで15万4400円まで行けます。前同様に,効率がいいのは5回ですね。

 なお,被疑者国選事件が起訴されると,自動的に被告人国選に移行します。起訴されてもされなくても略式でも,特に何もボーナスはありませんので,不起訴は狙わないようにしましょう^^
(註:論外。法テラスの基準で最も不当な仕組みとしか言いようがない。)

被疑者国選での稼ぎ方-ボーナス各論

 被疑者国選では,いわゆるチャリンチャリン方式,つまり,得られた成果に応じて加算報酬(ボーナス♪)の制度が採用されています。
 まず,要通訳事件だと通常報酬の20%が加算されます。要通訳事件でも面倒くさがらずに接見を重ねれば20%でも大きくなりますね。ただ,通訳人報酬を立て替える必要があるので善し悪しですね。

 遠距離接見では距離に応じて4000円ないし8000円が加算されます。ここらへんは移動時間と相談して回数を重ねましょう。
 特別案件,すなわち一度国選弁護人が解任されている事件の場合は通常報酬の50%ですが・・・アレな事件なので回避しましょう^^

 勾留取消し等で釈放されると5万円のボーナス。しかし,よほどでなければ認められないので,そんな手続きしている暇があったら接見を重ねましょう^^

 被害弁償ボーナスもありますが,被疑者段階で被害弁償するのはオススメできません! 変に被害弁償してしまって不起訴にでもなったら,せっかくの被告人国選で稼ぐチャンスをみすみすフイにしてしまうからです。被疑者国選段階の被害弁償ボーナスも,被告人国選段階の被害弁償ボーナスもまったく同額なので,被害弁償は起訴後にやりましょう^^
(註:論外。本当にこういうことを考える弁護人が出てもおかしくない規定。時間の限られた被疑者国選段階で示談をまとめる苦労と上記のことを考えれば,被疑者国選弁護段階の被害弁償ボーナスを増額すべき。)
 

被告人国選の稼ぎ方

 被告人国選の基本的な報酬は地裁だと7万7000円。簡裁だと6万6000円ですので,地裁事件をやりましょう。ただ,被疑者国選から担当している場合,1万2000円(簡裁だと9000円)が減算されますので要注意。
 そしてこれに公判の立会時間によって決まる公判加算が加わり通常報酬となります。 
 公判加算は,1回結審事件の場合,45分未満の場合0円(!)なので,ダラダラと被告人質問でもやって45分以上に引き延ばしましょう。期日ごと伸ばすと5800円ほど増えます^^ やり過ぎると裁判官がいい顔をしませんが,大規模庁なら一期一会だしやりたい放題だよね^^
(註:被告人の身柄拘束がそれだけ伸びるので,大問題ですね。)

 また,追起訴事件なども美味しいですね。追起訴だけの期日は3000円の公判加算がされる上,追起訴加算として1万5000円のボーナスが入ります。

 でも,接見をしても報酬はまったく変わらないので,できれば接見したくないですね^^;
 一度も接見しないと起訴報酬が半額にされてしまいますが,接見したかどうかなんて法テラスにはバレないバレない(笑)
(註:バレたら詐欺罪の成否が問題となりますね。なお,本項は指摘を受けて改めました。)

 接見に行かない代わりに被疑者弁護以上に被害弁償に精を出しましょう。
 仮に被害弁償を申し入れて拒んだらさっさと供託! 気を遣いまくる被害弁償の交渉をするよりもむしろ供託の方が楽! 供託でも実質的損害賠償と認められます。被害弁償ボーナスは3万円なので,コンビニの万引き事案とかなら弁護人が立て替えちゃっても余裕で黒字になりますね^^
(註:被疑者被告人の意に反してまで被害弁償金を立て替えるのはトラブルの元でしょうね。一方的に供託をするにしても,被害者からしたらとんでもない話です。)

 経費の削減を考えると,記録の謄写は悩ましい問題です。通常の自白事件程度では謄写代なぞ出ませんので,なんとか安く済ませたい。デジカメ謄写もいいんですが,手間がかかるしめんどくさい,ブル弁の御仁にとっては機会費用の方が高いかも知れません。「乙号証だけ謄写」とかいいですね。
(註:「乙号証だけ謄写」は当職もよくやりますすいません許してください何でもしますから)

 究極的には,刑事裁判においては「起訴状一本主義」という原則がありますので(刑訴法256条6項参照),裁判所から送られてくる起訴状だけで裁判に臨んでもいいんじゃないですかね(笑)
(註:これは弁護士職務基本規程46条や刑訴規則178条の6第2項等との関係で問題をはらむ行為です。よくネタには聞く話ですが,そのような弁護士はとっとと退場して欲しいものです。)

 たとえ完全に無罪を獲得しても通常報酬の100%増額なので,否認事件でもがんばらなくていいんじゃないですかね。事件回してこっ。
(註:そんな弁護人がいるのは論外。報酬が低すぎるのも論外)

チャリンチャリンでどのくらい稼げるのか

 こうして,20日勾留されてその間接見に行きまくり,地裁の被告人国選になってから被害弁償ボーナスを得て,無駄に2期日+判決言渡し期日を入れさせた場合の国選弁護報酬は,25万8200円にもなります!
 これに対して,2回だけ接見に行き10日間で証拠不十分で不起訴にした場合はたったの4万6400円です。
 法の光に心臓を捧げた弁護士がどちらの弁護活動を選ぶかは自明ですよね。
 ちなみに,某事務所の私選の基準なんかだともっと高額ですよね。こっちは知恵を出して国選で稼ごうとしているのに,同じだけ頑張ってこうも違うのではずるいと思いません?
(註:旧弁護士報酬規定では,事案簡明な刑事事件でも着手金20万円~50万円とされていました。これだけアコギなことをやっても,私選の刑事の着手金の最低額とほぼ同じなんですね。国選の基準がいかに低いか如実に分かります。)

まとめ

 概ね,上記の弁護方針と真逆の弁護をするのが最良の弁護だと思います。
 だけどそれじゃ稼げないからね。仕方ないね。


 法テラスの基準は「弁護人はきっと最善弁護してくれるはずだ!」という「性善説」に基づいて設定されているような気がします。しかしながら,いざ報酬請求の段になると「もしかしたら接見してないかもしれない」から接見資料の提出を求め,「公判時間をごまかしているかもしれない」から公判時間を書記官に問い合わせるなど,「性悪説」に立った運用をしているように思われます。
 善意によってのみ支えられている制度は早晩崩壊すると当職は考えます。

参考文献

 実体験や伝え聞いた話と法テラスの基準を元に書きました。
 なお,法テラスの基準「等」に対する怒りが本稿の原動力となっています。
 本稿を書くに当たって,大山先生の「被疑者国選報酬のおかしさ」(https://note.mu/oyamalaw/n/n922b8c294982)から多大なインスパイアを受けました。