刑裁サイ太のゴ3ネタブログ

他称・ビジネス法務系スター弁護士によるニッチすぎる弁護士実務解説 TwitterID: @uwaaaa

「有罪率が99.9%」という話の出所はどこか

はじめに

 『99.9-刑事専門弁護士- SEASONⅡ』が始まりました。
 前作同様,法廷シーンの作り込みが尋常ではなく,関心して見ております*1
 ところで,前作が放映されている頃に,タイトルになっている「99.9」は有罪率を本当に示すものかどうかを検証する記事を書きました。
keisaisaita.hatenablog.jp
 結論を一言で言うと,「平成26年の統計」「地方裁判所及び簡易裁判所の第1審で公判請求された事件」「形式裁判ではなく実質裁判の件数を母数とする」という,暗黙の前提となっている条件を設定すると,有罪率は99.9%ではないという結論でした。
 高い有罪率なのは問題であるものの,それを検証せずに「99.9」という数字が一人歩きしている現状に警鐘を鳴らす記事でした。


 前回は検証しただけで満足してしまいましたが,よくよく考えるとじゃあ「99.9%」という数字の出所はどこなのかが気になってきました。「99%」という人もいたりして,表記揺れも気になるところです。
 そこで,いつもどおり業務を放り出して今回も検証することにしました。
 第2期が始まったタイミングで記事を書くとPVが伸びそうですし。

検証の方法

 今回はGoogle検索でガンガン昔の記事を掘り起こしていきます。クソブログやまとめサイトが出ないように検索する時期を絞って,古い記事を探します。
 また,未だに読み方が分からない"CiNii"という論文検索サイトも使ってみました。

Google検索の結果

 インターネットが普及したのは1990年代後半,Googleが本格的に出てきたのが2000年代初頭の頃であったかと思います。
 そこで,まず,2000年の頃のページを検索すると,こんなページが引っかかりました。長めですが引用します。

99・9パーセントの有罪率
 レジュメの方に、いくつかの本を参考に、その文章を抜き書きしているものが資料としてあります。

 まず一つ、「日本の司法文化」と書き出していますけ れども、とりわけ日本の刑事司法における一番大きな問題は刑事裁判における有罪率、これは非常に大きな問題をはらんでいるのではないかと思っています。有罪率はなんと99・9%です。99・9%以上なんですね。つまり、千人に一人無罪が出ればええとこだという状態。そういう状態が今の刑事司法の状態なんです。
 具体的に、1996年の場合、その年に求刑がなされて判決が出されたものだけの数なんですけれども、全体で5万4221人の人達が求刑を受け判決をこの年に迎えています。その結果、5万4221人のうち無罪は35人なんです。これ、どれだけの数かというと大変な数字で、逆に5万4千何人の人は有罪だということになります。無罪率は0・06%、有罪率は99・94%ということになります。
 ただし、否認事件に限りますと、つまり法廷で自分はやっていませんというふうに否認した人について言いますと、もう少し無罪率は上がります。5万4221人のうち否認した人は3660人。そのうち無罪判決が出たのが35人ということになります。パーセンテージにしまして0・96%です。ですから否認事件に関しては99%が有罪で残り1%位が無罪になりうる、つまり百人中一人ということになります。
 これは世界的には類を見ないことなんですね。例えばアメリカ、イギリスのように陪審制を敷いている所でありますと、数10パーセント、無罪が出るわけです。制度が違いますので単純に比較できないにしても、日本の場合、これだけの数ということは、つまり起訴されればほぼ間違いなく有罪だということになります。

 もう一つ言いますと、裁判が機能していないとも言えますね。
http://tomiyama-mujitu.net/news/n2000/n141.htm

 冤罪支援をしている団体の講演録です。講演者の浜田寿美男博士は,証言の信用性についての研究をしているようです。
 ページの情報から,2000(平成12)年3月18日の講演録であるようです。
 これを見ると,具体的に検証をしながら,「有罪率はなんと99.9%」と述べておられます。「昔から99.9%以上などと言われてきました」的な書き方ではなく,検証をした上での数字です。しかも否認事件についても言及しています。


 ついで,2001(平成13)年を検索してみると,こんなサイトが。引用します。

日本の刑事裁判の有罪率は非常に高い。平成12年版犯罪白書によれば、平成10年に第1審での判決を受けた刑事被告人は6万8,078人。うち、無罪は61人と なっている。ひとたび起訴されれば、99.9%は有罪となる。
http://www.livingroom.ne.jp/r/responsibility.htm

 いわゆる薬害エイズ事件無罪判決に寄せた,北村健太郎博士のブログ(当時はギリギリブログとは呼ばなかったと思われるが。)です*2
 薬害エイズ事件の第1審判決が2001(平成13)年3月28日に言い渡されていて,このサイトにはその翌日のタイムスタンプがあることから,当時に記されたもので間違いないと思われます。
 北村博士は,社会学者で,病者・障害者の権利について研究されておられるようです。
 ここでも,わざわざ犯罪白書の数字を引用して99.9%という数字を導き出しています。経緯からすると前記の講演録とは独立して導き出した数字のような気がします。
 いずれにせよ,前記の講演録もこのブログも,【法学者や法律実務家ではない者による指摘】という点が非常に興味深いです。ほんっと法律家は数字に弱いですね!
 

 2002(平成14)年になると,「刑事裁判においては、ひとたび起訴されれば99%を超える異常な有罪率」とする自由法曹団のブログや,「無罪率は一部無罪も含めて、地裁レヴェルで0.1%未満である」とする深尾正樹博士の刑事訴訟法の講義のシラバスが引っかかります。
 また,この年には「逆転法廷―有罪率99%の壁」というドラマのノベライズ?作品が登場したりしています。


 2004(平成16)年には,「有罪率99.7パーセントの日本の刑事裁判」とする,東電OL事件の支援者のブログがありました。

 
 その後,大きな変化として,ネット界隈では,2007年に池田信夫氏の以下のブログと
ikedanobuo.livedoor.biz
 それに対するアンサーのモトケン氏の以下のブログ
「有罪率99%」は謎か異常か? - 元検弁護士のつぶやき
などがありました。
 二人とも現在も活動するネット論客ですね。
 この論争のきっかけは映画「それでもボクはやってない」の感想が元になっています。
 映画「それでもボクはやってない」の劇中に,

当番弁護士浜田の台詞
「有罪率は99.9%。千件に一件しか無罪はない。示談ですむような痴漢事件で、正直、裁判を闘ってもいいことなんか何もない」
http://blog.goo.ne.jp/j-j-n/e/38e278b14b6aa95eb2bfbefa5f4edbf6

主任弁護人荒川の台詞
「怖いのは、99.9%の有罪率が、裁判の結果ではなく、前提になってしまうことなんです」
http://blog.goo.ne.jp/j-j-n/e/38e278b14b6aa95eb2bfbefa5f4edbf6

という台詞があったのです。
 この映画はご存じのとおり大ヒットとなり,これで一般の方にもかなり広く知られるようになったものと思われます。


 ここまで調べて思ったのは,ネットの情報では有罪率が99%だったり,99.9%だったり,99.7%だったり,表記に揺れがありまくることです。池田氏は,劇中で「99.9%」と言及されているのに,「99%」としていたりします。表記が揺れるのは,余り検証もせずに記憶ベースで書いたりしているからですね*3
 そういう意味では,この頃までにも有罪率が高いという話は漠然と共有されているものの,その具体的な率は,時たま現れる検証者によって数字が入れ替わるような状況だったのかも知れません。
 それが,映画「それでもボクはやってない」の影響で「99.9%」という数字が固定化したのでしょう*4

テレビドラマ

 一般の方目線で改めて調べると,前の項でさらっと触れた「逆転法廷―有罪率99%の壁」の元ネタになったテレビドラマがありました。
 "弁護士・朝日岳之助"という,日本テレビ系列の火曜サスペンス内で放送されていたシリーズがそれです。
 この第2作が1990(平成2)年5月29日に放送されていますが,そのタイトルが「有罪率99%の壁」というものでした。
 この番組,視聴率が20%を超えていたようですから(すごい時代だ),多くの一般の方が「有罪率がめちゃくちゃ高い」,あるいは「99%だか99.9%だかが有罪になる」的な認識を持つきっかけになったのではないでしょうか。
 

論文の調査結果

 一般にはそんな感じとしても,法律家・研究者の文脈では出所はどこなのでしょうか。
 Ciiで,「有罪率」について言及していた論文を調べたところ,「無罪判決と国家賠償法上の違法性判断」という論文が見つかりました。
 ネットから閲覧できます↓
中京大学学術情報リポジトリ
 中京大学法学部 (当時)の村上博巳博士*5の論文です。1990(平成2)年に世に出た論文です。先ほどのドラマとほぼ同時期ですね。
 これの冒頭に以下のような記載があります。

わが国の刑事犯罪の有罪率は100%に近く,無罪率は約0.01%であるといわれる(1)

 おっ,有罪率を99.9%とする表現ですね。そして脚注(1)が付いています。脚注には以下のような文献が挙げられています。

長井圓「無罪判決の確定と公訴の提起・追行の違法」法律のひろば37巻10号5頁

 この「法律のひろば」が1984(昭和59)年10月に世に出たようです。すぐに文献を調べられませんので確定ではありませんが,これが「有罪率が99.9%」とする話の大本ではないかと思われます*6

まとめ

 法律家・研究者の間では,昭和59年頃までには「有罪率が99.9%」という認識を持っていた。
 一般人の間では,平成2年頃の火曜サスペンス(視聴率20%)で「有罪率99%」という数字が紹介された。その後も冤罪支援関係者等の間でも独自にこの数字が紹介されるなどしていたが,映画「それでもボクはやってない」の劇中の発言の影響で大きく人口に膾炙した。
 ということになりそうです。
 仕事の片手間に検証しただけなので,更なる検証は他の方にお任せします^^

*1:法廷シーン少ないですけどね・・・。

*2:すみません,Twitterでこのブログを紹介した時は偽弁護士騒動で知られる江川紹子氏かと思ってましたが,違いましたね。

*3:法曹が苦手な有効数字の概念を持ち出すと,99%は98.5%から99.499...%までを含むのでやたらと広い概念なんですよね。

*4:その後も伊藤真塾長が2008(平成20)年のブログで「有罪率99%」と言ってたりしますが,法律家は数字に弱いので・・・。

*5:元裁判官の研究者のようです。

*6:誰か法律のひろば調べてください^^;

大嘘判例八百選のあゆみと今後の展望

はじめに

 サイ太です。
 順調に巻号を重ねてきた【大嘘判例八百選】も,読者の皆様のおかげさまをもちまして,【第9版】まで上梓することができました。
 このままの調子でいくと,次回の夏コミでは【第10版】を作成することになりそうです。
 ちょうどキリがいい版になるので,10版に一度のお祭り企画を色々と妄想しています。まだまだ時間があるので,楽しいモノが作れればいいなと思っています。
 以前書いたまとめ記事も,第5版で止まってしまっているので,改めて【第9版】までの情報をアップ・トゥ・デイトしつつ,【第10版】の展望をお知らせしようかと思います。

 今回も時系列順に紹介していきます。

創刊のきっかけ

 昔話やアニメの内容を,判例雑誌に掲載される判例要旨風に紹介するのが「嘘判例」です。
 元々,とくべー先生(@tkbei)が得意とされていたネタでした。
 これを整理した本があれば,みたいな話がTwitterで出ましたので,じゃあやってみるかと思い,創刊を決意しました。
 それと同時に,嘘判例だけではなく,当職が得意とする「判例検索」もネタにしたいと思いました。
 こうして「『嘘判例的な法律面白ネタ』と『興味深い,面白いネタを調べた判例・コラム集』が掲載された同人誌」という「大嘘判例八百選」シリーズのコンセプトが誕生しました。

初版

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2012(平成24)年12月刊行。
続刊を予定していなかったので,「大嘘判例八百選」というタイトル。
初版というか初犯。そして諸般の事情により絶版。ただのレジュメなので刷ればいくらでも作れますが,もう需要ないでしょう・・・。
裏表紙ネタは初期からのファンの間だけで共有してください。
内容ですが,
判例
・日本昔話嘘判例百選
・アニメ・ゲーム嘘判例百選
・西洋嘘判例百選
・楽曲嘘判例百選
面白判例
・豊胸判例百選
・裁判官●●は●●のため署名押印できない判例百選
判例の射程判例百選
・弁護士死亡カルタ
と,八百選というタイトルにひっかけて8ネタ掲載しています。初期は頑張って守っていましたが最近はかなり無理矢理帳尻を合わせています。
「嘘」と入っていると「嘘の判例」,「嘘」と入っていなければ実際の判例を調べたもの,です。
実物は40部?くらいしか存在しないはずです。


補訂版

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2013(平成25)年8月刊行。
大嘘判例八百選[補訂版]。実は「補訂版」と微修正した「補訂版第2刷」の2バージョンあります。
今回からデザイナーとして某先生を迎え入れ,本格的に同人誌っぽくしました。
装丁は2世代前の判例百選風。当職なんかだとこの装丁が一番馴染みがありますね。
内容は初版とほぼ同一なので,初版にはコレクターズアイテム的な意味しかありません。
裏表紙ネタは「キァンキァン」と「uwaaaaっ当職の合コン少なすぎ?」。
総集編が出来たので絶版にしました。

第2版

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2013(平成25)年12月刊行。
本当は補訂版と同時に刊行予定だった第2版。
パイロット版として「うそしいきあん」を補訂版と同時に配布しています(第2版に昇華されたので絶版)。
装丁は1世代前の判例百選風。最近の若手諸君はこのデザインが一番馴染みがあるかも知れません。
裏表紙ネタは「ダメキァン」と「キーボード右手だけで打てる法律用語辞典」。
これも絶版です。とらのあなの通販でも完売してしまいました。

内容は,
オリジナル判例集の部
・けだし・思うに・この点判例百選
判例判例百選
・罰金判例百選
・労役場留置判例百選
・没収判例百選
うそしい起案の部
・民事系
・刑事系
・その他
となっています。第2版のオリジナル判例集は出色の出来と自負しています。

第3版

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2014(平成26)年8月刊行。
第3版。装丁はそのまま。
裏表紙ネタは「司法少女しゅがー☆モルト 新編 成仏の物語」と「失火責任法ガール」。
ここらへんから,ブログネタ・既出ネタを多く使い回す悪癖が出てきました。
惰性で続けている感が出てきたので,3部作で終わりにしようと思い,その旨,はしがきにも書いてありました。スマン,ありゃウソだった。
これも絶版です。
内容は,
オリジナル判例
コミケ判例百選
・インターネットスラング判例百選
・未決勾留日数判例百選
論評&コラム
・弁護士になりやすい名前百選
・司法修習日記
・国選弁護事件で稼ぐ方法
嘘司法試験
・嘘司法試験過去問
・ことりっぷ判例百選
となっています。コミケネットスラングは,コミケ会場ではウケがよいです。

第4版

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2014(平成26)年12月刊行。
第4版。装丁はそのまま。
「嘘」と題しているのだから,「3部作という構想も嘘だった」と言いやすかったので,第4版を作成することに。
ネタ切れとマンネリを打破するため,寄稿やコラボ企画を多く実施。
ronnor(@ahowota)氏と民裁ケイ子氏と組んで「判例検索クロスレビュー」を書きました(実際に判例検索システム会社の人が買いに来るという珍事が発生しました。)。
また,一兵卒氏から「控訴のハードル」と「うそしい起案歳末スペシャル」を寄稿いただきました。
裏表紙ネタは「映画 サイ太と○○えもん 週末の当職」と「若手弁護士のための合コン実務の留意点」。
流通数が最も少ないので,持ってる方は相当レアです(私の手元にもありません。)。
これも絶版です。
判例検索クロスレビュー
判例検索クロスレビュー(ronnor氏,民裁ケイ子氏と共著)
オリジナル判例
・訴訟費用判例百選
法科大学院判例百選
論評&コラム
・ラストメッセージin法科大学院
・法務系 LightningTalk
・法曹細かすぎて伝わらないモノマネ選手権
控訴のハードル(一兵卒氏寄稿)
嘘起案
・うそしいきあん歳末スペシャル(一兵卒氏寄稿)

総集編Ⅰ・Ⅱ

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2015(平成27)年4月刊行。
4種類も同時に頒布するのは骨が折れるので総集編を作りました(コウリョカイさんリスペクトです。)。
平成27年4月1日(なんて日だ!)に大阪で行われた,「Unique弁護士やらないか」に持ち込む用に作成しました。
装丁は,直近で出た民法判例百選の新版を参考にしました。
総集編Ⅰには,嘘判例,嘘起案,嘘司法試験過去問等の「嘘シリーズ」を固めました。
総集編Ⅱには,面白判例やコラム等を固めてあります。
この2冊に補訂版~第4版までのネタの全てを詰め込みました。
これに加え,ブログ公開していた「恋愛嘘判例百選」と「国選事件で稼ぐ方法についての弁明書」を追加収録しています。
裏表紙ネタは使い回しです。
当面,絶版にはしないつもりです。
当職と直接会った方やお世話になった方に頒布・贈呈しているほかは,イベント限定頒布とさせていただいています。

第5版

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2015(平成27)年12月刊行。
1年ぶりの完全新刊。第5版。
装丁は変えずに,総集編とあわせると民法判例百選Ⅰ~Ⅲのようになることを狙っています。なので,第5版なのにⅢなのです。
ついに「嘘要素」が全く消えました。まあ嘘判例という点では掲載されている方が少なかったので,もういいんじゃないですかね^^
「当面,絶版にはしないつもりです。」と言ってましたが,総集編Ⅲができたので絶版にしました。
今日現在でとらのあなの通販に少し残ってます。

内容は
コラム
・板倉弘博士傘寿記念祝賀論文集
・法令の注釈が細かい桃太郎
・削除された条文は,いったいどこへ行くんだろう。
Twitterアンケートを用いた法律用語の読み方,アクセントについての分析
・総合弁護士ローヤーG
面白判例
・オタク判例百選
・期間判例百選(やっしー氏寄稿)
脱出ゲーム
・ある法廷からの脱出
裏表紙ネタは,「ラブカイム」と「ある法廷からの脱出」。


第6版

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2016(平成28)年8月刊行。
総集編Ⅰ,Ⅱと第5版で,民法判例百選をパ○りきってしまい,表紙のネタに困ったので,とりあえず色違いでシリーズ化することに。
「ジャニーズ判例百選」という冒険企画をやってみたのですが,頒布直前にSMAPが解散を発表するという,数奇な運命をたどった本書。
振り返ってみるとブログの使い回しばかりでクオリティが低いと言われても仕方ないレベルですねコレ・・・。
ただ,「ジャニーズ判例百選」と「いわゆる”おげれつ”判例百選」は楽しく書けましたし,今も好評を得ています。
これも絶版です。とらのあなでは通販切れしてますが,どこかの実店舗ではまだわずかに在庫があるはずです。

内容は
面白判例
・ジャニーズ判例百選
・いわゆる”おげれつ”判例百選
・夜の校舎窓ガラス壊してまわった判例百選
コラム
・弁護士合コン工学
・日本の有罪率は本当に99.9%か?
・ひまわりは「正義」の象徴なのか?
・裁判所あらかると(やっしー氏寄稿)
・法学×謎解き
裏表紙ネタは「ポケット六法 行為無価値/結果無価値」と「法学×謎解き」。

第7版

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2016(平成28)年12月刊行。
ついに「サイ太」の元ネタが掲載されている「刑裁修習読本」が修習生に配布されなくなったという一方を受け,追悼企画として灰色を基調としたデザインに。
現役の法科大学院生にも寄稿をしてもらってようやく刊行にこぎ着けた問題作。
徹夜明けで東京高裁の期日に出頭した後,弁護士会図書館で法曹名鑑から有名人と同姓同名の法曹を探す作業が辛かった記憶です。しかもそんなに面白くなかったという。
これも絶版。とらのあなでは通販在庫切れですが,どこかの店舗にごくごく少数だけ在庫があるみたいです。

内容は
面白判例
・謎解き判例百選
・野球判例百選
コラム
・合コンしたい男子の職業ランキングにおける弁護士の順位の変動に関する一考察
・有名人と同姓同名法曹百選
・ひまわりは自由と正義の象徴?どっかーん
・弁護士の自殺
・法務系Lightning Talk 2
・絶望のロースクール(みにゃたろっく氏寄稿)
・法学×謎解き(解決編)
裏表紙は「月刊当職」「サイ太修習生追悼論文集」。ここも辛気くさくしてみました。

総集編Ⅲ

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2017(平成29)年8月刊行。
総集編Ⅰ,Ⅱと第5版から第7版に加えて新刊を作るとブースが足りなくなるので総集編Ⅲを上梓することに。
第5版~第7版までの内容を再掲しています。
表紙は第5版に似てますが,ちょっと色味が違います。満を持して「総集編Ⅲ」となり,本家民法判例百選に肩を並べられました。
裏表紙ネタは使い回しです。
70頁以上もあって印刷代が高くて困りますが,当面絶版にはしないつもりです。
こちらも,イベント限定頒布としています。


第8版

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2017(平成29)年8月刊行。
総集編Ⅲで表紙の使い回しは改め,新シリーズ突入っぽくしてみました。ほんとこのシリーズはこういう曲線が好きですね。
「不貞行為の無茶な言い訳判例百選」の検索作業がなかなかに辛かった記憶ですが,これは大ウケしているので調べて良かったなと思います。
そのほか,@hkodama氏からも寄稿を申し出ていただき,喜んで掲載いたしました。クソ原稿ばかりの同人誌が締まりますね。
「架空法令概説」では,「法律監修の仕事が欲しい」と締めくくったのですが,未だに問い合わせはありません(涙)。
とらのあなの通販ではまだ余裕があります。



内容は
面白判例
・不貞行為の無茶な言い訳判例百選
コラム
判例検索クイズ
・架空法令概説
・ラストメッセージin法科大学院事件
・弁護士バッジの裏話
・実録・犯罪に巻き込まれた弁護士
・「残業代バブル」って本当にあるの?
・株主提案議題百選(hkodama氏寄稿)
裏表紙ネタは「弁護士会の総会における委任状書換えの実務」と「被告は,原告に対し,5000兆円支払え」。

第9版

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2017(平成29)年12月刊行。
ついに出てしまった第9版。
今回は使い回しせず,原稿はフルスクラッチしました(「謎解き関係の登録商標まとめ」も,掲載前提で書いていますので。)。
「黒塗りの高級車判例百選」と「ことりっぷ判例百選」以外は読み応えのある内容になっています。
「10版に一度の出来映え」というヤツです。
ディズニー判例百選を書いたら某社の労組関係者の方がコミケに来場されるなど,思い出深い作品になりました。
とらのあなの通販で予約受付中です。

面白判例
・ディズニー判例百選
・黒塗りの高級車判例百選
・判決の訂正判例百選
・ことりっぷ判例百選
コラム
・国選弁護報酬について真面目に考える
・謎解き関係の登録商標まとめ
・「若手弁護士」の定義に関する研究
・弁護士謎解き制作法人格なき社団 日本鬼法曹協会からの挑戦状
裏表紙ネタは「大規模弁護士法人の業務停止に対する実務」と「破天荒弁護士サイ太伝」。

第10版(構想)

まだ構想段階です。予定では今年の夏コミで頒布できるかと。
やりたいことを適当に書き殴っておきます。実現できるかは当職の頑張り次第!
・表紙はなんか工夫したい。
・第10版ではなく「第0版」として,元祖判例百選をパ○るという方法も。
・はしがきは重厚な名著から引用しようかなと。
・ronnorさんとの判例検索ガチバトル。前回から構想してましたが,お祭り企画なので第10版に回そうと思ってました。
・そのほか,これまで寄稿してくれた一兵卒さん,やっしーさん,みにゃたろっくさん,@hkodama先生にも再度声を掛けてみる。
・そのほか,赤ネコ先生やバベル先生などとコラボしてみる。
・岡口さんに声を掛けて,クールポコのコスプレの写真集を出す。
・ファーストメッセージin大嘘判例八百選。総集編には掲載されなかった,これまでのはしがきを再録。フルスクラッチで書いたのは最初の方だけで,途中から法律書をパ○る方向にシフトしてるのでネタとしてはありかと。
・「一選の格差」。判例百選という割に100個で収まりきらない百選も多いので,全部の百選を調べて100との比率,すなわち「一選の格差」を調べる。相当程度の百選が違憲状態となっていることでしょう。


総集編の続編?

このまま旧版も同時に頒布すると,6種類も同時に頒布することになり,机の上が崩壊しかねないので,更なる総集編を作るかも。
場合によれば,第8版,第9版の内容を併せて第10版にするかも・・・。


まとめ

そんな感じで,大嘘判例八百選シリーズを今後ともよろしくお願いいたします。

「若手弁護士」の概念に関する研究

はじめに-ごあいさつ

 本年もよろしくお願いしていきたいと思います。サイ太でございます。
 さて,先日は,年の瀬のクッソ忙しい時期に,コミケにお越しいただき,ありがとうございました。
 12時34分に完売,その後持ち込んだ旧刊も含めてほぼ完売という成果が得られました。
 皆様のご厚誼に感謝するとともに,入手できなかった皆様にお詫び申し上げます。
 お詫びと言ってはなんですが,新刊【大嘘判例八百選[第9版]】に掲載したネタの中から,「『若手弁護士』の概念に関する研究」をシングルカットすることとしました*1
 なお,大嘘判例八百選[第9版]につきましても,とらのあなにて通販する予定ですので,詳報をお待ちください。
https://www.toranoana.jp/mailorder/cot/author/24/b7babadb20a5b5a5a4c2c0_01.html


 八百選シリーズを未読の方へ:八百選にはこういう感じの緩い法律系コラムが載っています。他にも独自に調べた判例集など,面白い記事がたくさん載ってます(下記の記事参照)。興味を持たれた方はぜひ上記とらのあなの通販で買ってね^^ 
keisaisaita.hatenablog.jp




序論

 我が国では,近時の法曹人口拡大政策により,弁護士人口が下から持ち上がる形で増大した。そのため,弁護士としてのキャリアが浅い弁護士,すなわち「若手弁護士」が大量に発生することとなった。日弁連でも「若手弁護士カンファレンス」なる会合を定期的に開くなど,「若手弁護士」に対する施策が重要な課題であると認識されつつある。
 一方,「若手弁護士」が大量に発生したことをいいことに,必ずしもキャリアが浅くないのにもかかわらず,堂々と「若手弁護士」を詐称する弁護士が登場するなどしており,「若手弁護士」概念が揺らぎつつある。
 このような情勢の中,改めて「若手弁護士」の概念について研究をするのが本稿である。

3説の対立と私見

 「若手弁護士」と言えるかどうかについては,従来,主観説,客観説,折衷説の3説が対立してきたとされている。
 若手弁護士とは何か | 弁護士法人岩田法律事務所参照。
 主観説とは,若手だと自ら考える者が若手であるとする立場である。自称している限りは若手という意味ではわかりやすい説ではあるものの,いつまでも「若手弁護士」を詐称することができてしまううらみがある。
 客観説とは,登録年数や実年齢等の客観的な基準をもって判定する立場である。客観的な基準で判定することができるという意味では優れているが,ボーダーラインをどこに設定するかについては更に争いがある。特に,年齢と修習期が一致しないことが通常の弁護士業界であるため,その線引きは難しい。
 折衷説とは,登録年数及び実年齢その他の事情を総合考量する立場である。「若手弁護士」たる資格を正確に定義に反映できる一方,判定が煩雑に過ぎてしまう点に問題が残る。
 前掲のブログでは,客観説・折衷説を否定した上で,主観説を採用しているようである。
 しかし,私見は折衷説に立つ。「若手弁護士」として弁護士が括られる場合には何らかの意図が存在するはずである。そこには「まあ登録5年目にもなれば独立していたり,経済的にも安定している弁護士も多いだろうから,金銭的な負担は多くても問題ないだろう」というような判断から,「62期にはもの申す弁護士が多いから,今回の若手弁護士カンファレンスに呼べるように,ここまでの年限で切ろう」というような政策的な判断まで,意図に沿った考慮が働いているはずである。その限りにおいては,通常は,折衷説的な考慮をした上で「若手弁護士」という括りを設けているわけである。
 このようにして,折衷説が正当である。

実態はどうか

 以下に,「若手弁護士」概念の実態調査の結果を整理した。結論を急ぐと,様々な定義があり,いずれも折衷説的な考慮をした上で「若手弁護士」概念を設定しているように思われる。

日弁連関係

 日弁連の会員サイトには,「若手会員の皆さんへ」と題するページが存在する。当然ここには,様々な「若手弁護士」の定義があるはずである。
・弁護士業務支援ホットライン
 キャリアの浅い弁護士に対する「夏休み子ども科学電話相談」のような企画を日弁連が運営している。「登録5年目までの弁護士」が対象となる。

・若手会員の国際会議派遣について
 日弁連では,若手会員の国際化支援として,国際法曹団体等が主催する国際会議への希望者を募集している。ここで「若手会員」とされるには「登録後10年以内(再登録の場合は初回登録後10年以内)」とされている。「再登録」に言及しているのは,留学を機に登録を抹消するような弁護士を想定しているものと思われる。

・第30回LAWASIA年次大会(LAWASIA東京大会2017)
 平成29年9月18日~21日に行われた,ローエイシアに参加するための費用を補助する制度。「登録10年以下の若手会員(同大会開催時点で登録10年目の会員を含む。)」とされている。

・若手法曹国際協会(AIJA)第55回年次大会
 「若手法曹国際協会」の東京大会に参加する若手に援助を与える制度である。「弁護士登録11年未満(再登録の場合は初回登録後11年未満)」とされている。上記では「以内」「以下」だったのに,ここでは「未満」とされており,特定の層を含めようとする強い意図を感じるのは当職だけだろうか。

各種法曹団体

 弁護士・法曹が加入する団体にも「若手弁護士」を標榜するものがある。
・若手法曹国際協会(AIJA)
 "International Association of Young Lawyers",若手法曹国際協会である。略称と違うじゃねーかと思ったが,フランス語だと略称がAIJAになる,FIFAスタイルを導入しているようである。
 "lawyers and in-house counsel aged 45 adn under"とあり,AIJAでは法曹としてのキャリアではなく年齢で判定される。

・あすわか
 自由民主党の「日本国憲法改正草案」の内容とその怖さを,広く知らせることを目的とする,若手弁護士の有志の会,略して「あすわか」です(公式サイトより)。
 公式サイト上では,「弁護士登録期が51期以降=登録から15年以内」とされている。が,情報が古すぎてこの等号は成立しない(51期は,来年で登録後20年を迎えるはず。)。この団体の寄附行為(?)を見てみたい。

・若手弁護士本音スレッド
 5ch(旧2ch)の法律相談板には「若手弁護士本音スレッド」(2011/12/15設立)が存在する。ねらー法曹が団体といえるかはともかくとして,いちおうここで紹介する。このスレでは,「『若手』の定義は各自にお任せします」とされている。明示的に主観説を採用している希有な例である。
 ただ,「若手法曹スレッド」(2005/04/06設立)は,「登録約5年以内の弁護士及び任官約5年以内の判事補(未特例)並びに検事が互いに交流を深め研鑽するためのスレッドです。 」とされており,ねらー法曹の間でも空気感の違いがあるようである。

・神奈川県弁護士会の就職希望者の履歴書預かりサービス
 神奈川県弁護士会が,県内の法律事務所に就職を希望する若手弁護士について,履歴書を預かった上で県内の弁護士に情報提供をするサービスを行っている。
 ここでは「若手弁護士(登録3年未満)」とされている。やや短め。

・京都弁護士会の少壮会
 京都弁護士会に存在する,若手弁護士が参加する派閥?の少壮会。ここでは「登録5年目までの若手弁護士」が参加できることになっている。

・全弁協
 全弁協,全国弁護士協同組合連合会が募集する,所得補償保険「若手弁護士応援プラン」。ここでは,「満20歳~満39歳まで」とされている。こういう保険の加入の場面では病気リスクの方が効いてくるので,キャリアは関係ないのであろう。
 引受保険会社は日弁連御用達の損保ジャパンのようである。

判例

 実は,若手弁護士の定義については,裁判例が存在する。
 千葉地裁松戸支判平成2年8月23日判例タイムズ784号231頁である。
 原告が,弁護士である被告に対して事件を依頼したところ,被告が若手弁護士も代理人に加えさせ,爾後は若手弁護士とだけ打ち合わせをしたことが委任契約上の債務不履行に当たるとして損害賠償を求めた事例である。
 よくある「ボス弁先生に頼んだのに頼りない新人が出てきた」的な話である。この点については,「一件の事件を複数の弁護士が受任した場合に,その一人が訴訟活動を担当し,他の弁護士は必要に応じてこれに協力するにとどめることは,委任者からこれを不満とする明示の意思表示がなされない限りは、委任の趣旨に反するものではない」などという一般論を判示しており,参考になる。
 では若手弁護士の定義とは。争点に対する判断中には,「若手弁護士である(実名)弁護士に協力を依頼し・・・たことが認められる」とあり,この実名弁護士を若手弁護士であると事実認定しているようである。
 この弁護士を調べてみると,16期,御年87歳の超大ベテランのようである。委任をしたのが昭和49年の時点なので,当時のこの弁護士は43歳,弁護士11年目くらいであったと思われる。時代背景を考えても,なかなかに大胆な定義である。某先生がリアルガチで含まれそうな若手の定義に大草原不可避である。

まとめ

 以上のとおり,「若手弁護士」の定義の実態には様々なものがあった。そこでは,大きな一貫性は見られず,定義する側の論理で決められていることが想像できるものもあった。まさに折衷説的に判断されていることが明らかであり,折衷説の正しさが実証的にも明らかになったといえよう。
 また,客観説からは到底説明できない範囲にまで若手弁護士概念を拡張している裁判例からは,裁判所の見解も少なくとも客観説を採らないことが分かった。
 もっとも,「若手弁護士」は今後も減ることはなく,弁護士会を,日弁連を,ひいては社会を動かし続ける存在であるはずである。今後の「若手弁護士」概念の理論の進展に期待したい。

*1:鮮度のいいうちに若手ネタを消費する目的もありますが・・・w