はじめに
以前,以下のようなツイートをして,弁護士の自殺について考えてみたことがありました。
弁護士の自殺率。平成22年度の統計( http://t.co/RdCo6khT )によると、平成22年度は13人の弁護士が自殺している。弁護士を3万人とみると、約2300人に1人が自殺。一方で、自殺者の合計が31690人。日本人全体で約3800人に1人が自殺。弁護士は高い。
— サイ太 (@uwaaaa) 2012, 11月 22
今日,そういう話題が出ていたので再掲してみたところ,大きな反響がありました。その割に,引用したURLが失効していたり,平成22年の情報だったりと古かったので,アップ・トゥ・デイトしようと思いブログにすることにしました。
本当はコミケも受かったし,「総合弁護士 アトーニーG第2夜」を書くつもりでしたが,早速ネタが詰まったので真面目な記事を書こうかと。
あっ,これも多分大嘘判例八百選に載せると思います。いつの間にか判例とは何にも関係ない社会派企画を普通に載せるようになってるんですがそれはいいんですかね・・・。
調査方法
内閣府が自殺の統計をまとめています。
自殺の統計 - 内閣府
ここにある「職業別,原因・動機別自殺者数」という統計を用いて分析(以下,
「pdfから情報を抜き出してエクセルでぱぱぱっと表を作っただけ」という。)しました。
公表されている統計は平成16年からですが,「職業別,原因動機別」に整理されているのが平成19年からなので,本pdfから情報を抜き出してエクセルでぱぱぱっと表を作っただけも平成19年からを対象にしました。
また,グラフの見栄えの問題から,以下では和暦ではなく西暦を用いました。
自殺した弁護士の数と割合
自殺した弁護士の数を経年比較したものがfig.1です。
具体的には,2007年から2014年までの間に自殺した弁護士は【96名】で,男性は【84名】,女性は【12名】ということになります。平均して【年間12名】の弁護士が自殺している計算になります。
2004年~2006年の「弁護士等」の自殺者のデータも出ていますが,15名,8名,13名という推移であり,傾向は変わっていません。
また,自殺した人数を当時の弁護士の人数(
http://www.nichibenren.or.jp/library/ja/publication/books/data/2014/whitepaper_suii_2014.pdf
)で除した「自殺率」(趣味の悪い用語ですが・・・)は以下のとおりです。
年 | ○人に1人が自殺 |
---|---|
2007 | 2312 |
2008 | 2276 |
2009 | 2244 |
2010 | 1599 |
2011 | 3811 |
2012 | 2292 |
2013 | 3057 |
2014 | 2920 |
概ね,弁護士2000人~3000人に1人が自殺している計算になります。
自殺した理由
内閣府の統計では,自殺の理由について以下のとおり大分類しています。そのそれぞれについて小分類を設けて分類しています。
・家庭問題
・健康問題
・経済・生活問題
・勤務問題
・男女問題
・学校問題
・その他
ここでは,大分類ごとに理由を円グラフにしてみました。男性と女性で分けています。
全般的にいえるのは,健康問題が多いことでしょう。男性で39%,女性で50%と多数を占めています。「健康問題」の小分類は,「身体の病気」,「うつ病」,「」統合失調症」,「その他の精神疾患」などがあり,その中でも多いのが,「うつ病」,次いで「身体の病気」でした。また,「その他の精神疾患」も意外と多いのですが,うつ病・統合失調症・アルコール依存・薬物乱用の他の精神疾患が何なのか,ちょっと気になります。
男性では2番目に多い「経済・生活問題」が女性では1件もないことも注目されます。「経済・生活問題」には,「事業不振」「生活苦」「負債(多重債務)」等,個人事業主が直面する問題が含まれます。経営に参画する率のジェンダー差によるものではないかと見ております。
勤務問題は男女を問わずそこそこ見られました。小分類では「仕事疲れ」が多数を占め,次に「職場の人間関係」が上がります。女性では「職場の人間関係」がやや多かった印象です。ここらへんもジェンダー差ですかねえ。
女性に多いのは家庭問題でした。親子関係,夫婦関係,家族の死亡といろいろなパターンがあります。
検討
職業としてわざわざ「弁護士」を取り上げて統計を取っているのが興味深いです。職業別の大分類は専門・技術職枠なのですが,たとえば医師は「医療・保健従事者」と括られていますし,「芸能人」と「プロスポーツ選手」も一緒くたです。他方,学校の教員は「教員」として統計されています。それらとの対比で考えると,弁護士は自殺率が高いか,高いと思われているのではないかと考えられます。
ところで,部外者の感覚では,教員の自殺は多そうなイメージがありますが,果たしてどうでしょうか。
教員は日本に約100万人いるようです(ソースはwikipediaなので怪しいですが。)。それに対して2014年の教員の自殺者は103人です。1万人に1人の計算です。
他方,弁護士は,上述したとおり,2000~3000人に1人ですから・・・弁護士の方がよっぽど自殺率は高いことになりますね。