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刑裁サイ太のゴ3ネタブログ

他称・ビジネス法務系スター弁護士によるニッチすぎる弁護士実務解説 TwitterID: @uwaaaa

平成26年中に公表された弁護士懲戒事例の分析

はじめに

 先日,次のようなニュースが話題になっておりました。

昨年の弁護士懲戒処分、過去最多に 預かり金流用目立つ:朝日新聞デジタル
http://digital.asahi.com/articles/ASH2B5G17H2BUTIL02N.html

 弁護士が激増したので,懲戒処分がそれに呼応して増えるのはそう不思議なことではないと思われます。しかし,「司法試験が簡単になって法曹の質が低下したからだ。」というような論調もあります。また,それとは逆に,「期が古いほど法曹の質は低い」とする研究もあるようです(http://t.co/YAiMPaROzt)。
 じゃあ実際,懲戒を受けるような弁護士は期が若いのか,古いのか,はっきりさせようじゃないかということで,まーた刑裁サイ太が業務を放り出して調査したというわけ。

調査方法

 日弁連の機関誌である「自由と正義」の平成26年1月号から同12月号まで,巻末に載っている懲戒欄をチェックしました(サイ太「『自由と正義』を開いて懲戒欄を見てチェック」リツコ「次」サイ太「『自由と正義』を開いて懲戒欄を見てチェック」リツコ「次」・・・みたいな精神的にヤバイ作業でした。)。
 「自由と正義」には登録番号しか公告されないので,登録番号から修習期を日弁連会員サイト上の会員検索でリサーチ。登録抹消となっている者についてはインターネット検索等にて追加リサーチ(それでも分からない者もいました。弁護士業界の闇は深い・・・。)
 1~9期を0期代,10期~19期を10期代・・・60期~66期までを60期代としました。平成26年12月に一斉登録した67期は懲戒されようがないので除外しています。また,弁護士法5条請求に基づく登録者,調べてもよく分からない出自の者(こういう弁護士がいる時点で,もうね・・・。)は別カウントしています。
 懲戒処分の別をチェック。また,懲戒理由を以下のとおりに整理。
・弁護過誤・・・積極的な弁護過誤。利益相反や不適切な書面送付等。
・事件放置・・・事件処理を数年以上放置したようなケース。
・過大報酬・・・大した手間かけていないのに高額な報酬を請求したケース。
・金銭問題・・・依頼者等との間の貸金等の金銭トラブル(なお,弁護士職務基本規程25条で,依頼者との間の金銭の貸し借りは禁止されています。)。
・不祥事・・・私的な犯罪やブログの書き込み(!)等,業務とは関係ない分野での不祥事。
・横領・・・不祥事に括られるものであるが,「目立つ」ということなので別枠。
・虚偽書類作成・・・事件放置や不祥事とも絡むが,どちらとも評価しにくいので別枠にした。
・非弁提携・・・弁護士でない者から仕事の斡旋を受けたりしたケース。
・業務停止中の業務・・・読んで字の如く。
 個人の特定が主眼ではないので,登録単位会は控えませんでしたが,単位会ごとに集計しても面白かったと思います。やり直すの面倒なので当職はやりませんけど^^;

調査結果

 懲戒件数は104件でした。冒頭のニュースソースには101件とありましたが,これは,1件について連名で事件を受任していた者が複数いたためではないかと分析しています。あるいは,当職の数え間違いか。あるいは,「平成26年中に公表された」なのか「平成26年中に処分が効力を生じた」なのかの違い(処分が効力を生じてから2~3ヶ月程度で「自由と正義」で公表されます。)か。いずれにしても大勢に影響はないので勘弁してください。
 期ごとの懲戒件数は以下のグラフのとおり。

f:id:go3neta:20150515200023j:plain

 これを見ると,件数では20期代と30期代が抜きんでていることが分かります。他方,40期代では件数がやや減るものの,50期代は40期代よりも増加しているのが興味深いところです。50期代は弁護士人口拡大期に突入していますから,弁護士の人数の増大の影響が考えられるところでしょうか。

 そこで,人数増大の影響を除外して考えるため,期ごとの懲戒率(懲戒された人員/その期全体の人員)もグラフにしてみました。なお,弁護士全体から見た懲戒率は,約0.3%程度(100件/35000人)です。

f:id:go3neta:20150515200314j:plain


 これを見ると,前同様に20期代と30期代がほぼ並んでいます。そして,期が若くなるのに従って,懲戒率は下がっていきます。50期代以降は,弁護士全体の懲戒率を下回っています。

考察

 では,なぜこのようなことになるのか,考察してみたいと思います。
 「業務に慣れた頃に大きなミスをやらかす」という格言を聞いて育ちましたが,ベテランの先生方には,「油断」 というものがあるのではないでしょうか。
 また,若手ほど,「ちゃんと謝れる」ということもあるかも知れません。適切な時機に謝罪できていれば,懲戒にまでは至らなかった,そういう事例も多くありそうです。大ベテランの先生が頭を下げるというのは心理的に抵抗があるのかも知れません。
 さらには,金銭的な懲戒事由も多くあるところ,儲かっていた頃と同じ高コスト体質のまま放漫経営を行った結果,金銭に困り,横領等に及ぶ・・・というストーリーもあり得ます。実際,平成26年中にはイソ弁が横領を行った事例は確認できませんでした。
 このように,「懲戒を受ける弁護士はベテランが多い」ということは,構造的に分析できると思われます。

各論

 さて,ここからは,懲戒事由ごとに分けて分析してみようと思います。

  • 横領

 20期代が3人,30期代1人,40期代1人です。いずれも業務停止以上の懲戒を受けており,業務停止2年や除名という処分を受けているケースもありました。
 見てのとおり,横領で懲戒を受けるのはベテランということが明確に分かりました。まあ,焦げ付いてしまうほどの金銭を横領できるのは,年数を経たベテランだけ,ということなのでしょうけれども。
多額の金銭を扱う財産管理人など回ってきたことのない若手からすると,非常に不公平感が否めません。報酬がほとんど見込めない成年後見事案を多数経験している当職からすると,横領事案を聞くたびにやる気が減退していきます。財産管理人をベテランにさせるなら,若手と共同受任ないし補助者として関与させて報酬を分けてはどうでしょうかねえ。若手は仕事が勉強できて,報酬ももらえて嬉しい,依頼者もフットワークが軽い若手が担当してくれて嬉しい,ベテランは報酬が減らされて横領もできなくなっちゃって哀しい,といいことづくめです。


  • 非弁提携

 0期代に1人,10期代に1人,20期代に2人,30期代に1人の,合計5名です。このほか,「業務停止中の業務」の者(1名,10期代)の原懲戒も非弁提携だったような気がします。
 期が上のベテラン勢ばかりです。察するに,経済的に困窮していて,判断力が低下しているベテラン弁護士が食い物にされているのでしょうか。新人がそういう勢力に取り込まれているケースも今後出てきそうです。
 処分も業務停止1ヶ月から退会命令までと,非常に重い処分が下っています。非弁提携者は累犯傾向があるようですので,当然といえば当然です。こういう不良ベテランをどうフォローしていくかについては,日弁連が力を入れて取り組むべき事業ではないかと思われます。

  • 不祥事

 20期代に1人,50期代に1人,60期代に4人の合計6名です。50期代の者も50期代後半であることから,若手に多い懲戒類型であると思われます。
 上記の分析のとおり,懲戒を受ける弁護士の多くはベテランではありますが,このように若手が多く懲戒を受けている類型もあるわけです。我々若手も襟を正さねばなりません。
 特定をするのは本意ではないので事案の内容に踏み込むのは躊躇われますが,セクハラや性的な犯罪等が目立っていました。

  • 弁護過誤

 これは,期の上下を問わず,満遍なく(?)いました。個々の弁護過誤の内容が違うので,統一的な分析はしにくいですが,老若男女を問わず受けかねない懲戒事由ということで,一寸先は闇ということは分かりますね。

  • 過大報酬

 0期代が1人,20期代が3人,30期代が2人,50期代1人,60期代1人。
 ベテランが多いですが,若手も目立ちます。若手のイケイケ弁護士が,調子に乗ってお金を取りすぎてしまうとこうなります。
 ボスから「お金を取りすぎてはいけない」という名言を頂戴した当職も,調子に乗らないようにしたいと思います。

  • 事件放置

 弁護過誤と同様,満遍なくいました。
 ただ,そうはいっても20期代,30期代が多い印象です(14人/29人)。若手はフットワークが軽く,ベテランはフットワークが重いため,こういう結果になるのでしょうか。
 なかなか稼げなくなっている昨今,事件を無理に受任してしまって放置したりすることについては,若手もベテランも気をつけなければなりません。

  • 金銭問題

 典型的には,依頼者から金銭を借りたりしてその返済ができなくなったようなパターンです。
 0期代1人,20期代1人,30期代1人です。戒告,業務停止6月,10月という処分内容ですので,重い事案が多いです。
 先に考察したとおり,こういう金銭問題系はやはりベテランが多いです。当職のような若手弁護士からすると,依頼者との間で金銭を貸し借りすること自体が信じられません。

まとめ

 「弁護士の質」という言葉は多義的ですが,こと「懲戒の件数・率」でいえば,ベテランほど懲戒が多いので,質はむしろ上がっていると評価できます。
 もちろん,懲戒の多寡だけで「弁護士の質」は推し量れませんが,若手というだけで,丙案組というだけで,新司法試験組というだけで,「質が下がった」とする論調には大いに疑問があります。
 ただ,個別的に見ると,若手に多い懲戒類型もあるので,若手も気を抜くことなく弁護士業に励むべきだと思います。