読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

刑裁サイ太のゴ3ネタブログ

他称・ビジネス法務系スター弁護士によるニッチすぎる弁護士実務解説 TwitterID: @uwaaaa

修習地選択ガイド 68期版(webエディション)

はじめに

 今日あたりに,修習地通知が推定第68期司法修習生宛てに届いたようですね。
 ところで,当職が主宰するサークル「断罪法人 日本鬼法曹協会」は,「修習地選択ガイド 68期版」を発行しました(あっ,意外とコミケの謝辞を述べておりませんでしたのでこの場を借りて申し上げます。今年の夏コミに来てくださった皆さん,ありがとうございました!)。基本的には修習地を選択するのに当たって考えるべき議論を記載したつもりですが,どうせ今日あたりはTwitter上でおらが村の修習地自慢大会が始まるであろうことを踏まえ,その参考資料として使っていただきたく,以下に全文公開しようと思います。

(原文の)はじめに

   本レジュメは,合格発表を間近に控え(ているのにこんなクッソ暑い中,ビッグサイトくんだりまで来)た推定68期司法修習生に贈るものである。
   言うまでもなく,修習地の選択は,その後の法曹としての人生を大きく左右するものである。しかしながら,司法試験に合格してから修習地を選択するまでの期間は,現在の制度では1週間強ほどしかない。絶対的に時間がない中,浮かれた気持ちで決定してしまいがちなもので,必ずしも熟慮の上で修習地が選択されているわけではないという現状がある。
   そのような現状を憂い,今回,このようなガイドを作成することとした。本ガイドを読んだ推定68期司法修習生が無事に合格を果たされ,適切な修習地を選択し,修習の実を大いに上げていただくことを祈念するものである。大嘘判例八百選の3部作と合わせてちょうど1000円にすればセット販売で会計が楽になるからなどという安易な考えで作っているわけでは決してないことをご理解いただきたい。

修習地選択とは

 1 新制度になった司法修習では,大きく分けて【実務修習】と【集合修習】とが存在する。
   このうち,【実務修習】を実施する地を選択するのが,修習地選択ということになる。
 2 修習地について
   選択しうる修習地になるのは,基本的には,地裁本庁の存する地ということになる。東京は例外的に,立川支部が本庁扱いで修習地のひとつとされている。
   実際に修習生として配属されるのは各地裁本庁(立川支部を含む。面倒なので以下同じ。)である。弁護修習中や検察修習中であっても,地裁本庁に配属されることになっている。
   過去には,全部の地裁本庁で修習が行われないことがあったようであるが,合格者の増大と旧修習の廃止に伴い,全国すべての地裁本庁が修習地の候補となっている。
   そうすると,47都道府県の県庁等所在地の地裁本庁と,函館,旭川,釧路の各地裁本庁,立川支部,の51箇所から修習地を選択すべきこととなる。
 3 修習地の志望方法
  (1) 修習地は,司法修習採用選考(註:合格してから見るとテンパるので,事前にぐぐって見ておくと吉です。過去には,最高裁のサイトがハックされて閲覧が不能になったこともあります。)の際に提出する「実務修習希望地調査書」にその志望を記載することになっている。
    調査書には,第1希望から第6希望まで記載することとなっている。記載にはいくつかルールがある。
  ①修習地を1群・2群・3群に分ける。
  ②1群は2つまでしか記載してはいけない。
  ③第5希望~第6希望には,必ず3群を選ばなければならない。
  ④希望を記載しないか,「一任」と記載すると,当局が割り振ることとなる。
    群分けについては,大都市であるか,大都市から近いほど1群に近くなり,地方になればなるほど3群に近くなるという傾向がある。
    大都市は人気があるため集中しないように,地方は人気がなく,誰も行かないことがないようにこのようなルールが定められたものと思われる。
    具体的な群分けについては以下のとおりである。
【1群】
東京,立川,横浜,さいたま,千葉,宇都宮,静岡,甲府,大阪,京都,神戸,大津,名古屋,福岡,仙台,札幌
================大都市の壁================
【2群】
水戸,前橋,長野,新潟,奈良,和歌山,津,岐阜,金沢,広島,岡山,熊本,那覇,福島,高松
==============地方中核都市の壁==============
【3群】
福井,富山,山口,鳥取,松江,佐賀,長崎,大分,鹿児島,宮崎,山形,盛岡,秋田,青森,函館,旭川,釧路,徳島,高知,松山

  図示するとこんな感じ。
f:id:go3neta:20141020170228p:plain


  (2) 群分けについてのコメント
    基本的には,大都市が1群となっている。一方,「大都市に出やすい都市」も1群になっている事実も見逃せない。たとえば,宇都宮や甲府,大津などがそうである。当地自体は2群の修習地と比しても都市や弁護士数等も遜色はない。しかしながら,宇都宮は新幹線で東京駅に出やすく,甲府もまた新宿駅に出やすく,大津も京都・大阪に出やすいことから,人気があり,1群となっているものと推察される。
    かつては,那覇が1群であった。これは,就職活動を早々に終えた(おそらくは)4大事務所等の内定者がバカンス感覚でこぞって志望したから,などという都市伝説もあった。昔話ついでに言えば,かつては1群・2群・3群ではなく,下線部修習(3群的な修習地に下線が引かれていたことに由来する。)と呼ばれていたことも指摘しておく。

 4 その他の事情
   このほか,同調査書には「具体的事情」を記載する欄がある。類型的には,配偶者や子との同居,病気・通院の必要,親族の介護,経済的事情である。特になければ記載の必要はない。
   また,自身が過去に裁判所・検察庁の職員であった場合,親族に裁判所・検察庁の職員がいる場合,自身や家族・友人にかかる訴訟が係属している場合等を記載することとなっている。

 5 いずれにせよ,このように修習地を選択することとなる。その結果,修習開始1ヶ月半前ほどに,「あなたが司法修習生に採用された場合には,【○○地裁】に配属されることとなりました。」という迂遠な通知が届くこととなる。なお,不備等があると最高裁から連絡があってビビるので,きちんと提出前に控えを取ることをお勧めする。

修習地の決まり方とその対策

 1 通説
   「修習地は,調査書に記載された一切の事情を加味して決定される。」というのが通説である。司法試験と同じで,書面一本主義であるため,書かなければ考慮されない。

 2 事情についてとその対策
   親族が裁判所・検察庁の職員である場合や知り合いが訴訟係属している場合等は,当然にその修習地から外される可能性は高くなろう。おそらく書かなかったとしても調査するものと思われ,正直に書くべきであろう。書かない場合,最高裁の調査が待っている。
   具体的な事情の場合,書きぶりが重要になってくると思われる。「家族の介護が必要だから」ではダメで,「現在同居中の父親が身体障害者(1級,介護認定・要介護5)で,母と私で入浴・食事等の介護を行っており,私がいないと介護に支障が生じるため,現住所地から通勤可能な地を希望する。」と具体的に,そして説得的に記載すべきである。まあ記入例そのまんまだけど。
   いずれにしても,書かなければ考慮されないのであるから,関係することはなんでも書けばよいものと思われる。
   なお,余談になるが,この「事情を記載して天命を待つ。」というのは,いずみ寮に入るための抽選の際にも出てくるので,同様の心構えで当たられたい。

 3 希望順位の付け方総論
  (1) 希望が通った割合のアンケート
    修習地の志望順位と実際の修習地について日弁連等が実施したアンケートがある。その結果を以下に述べる。

新第65期				第66期
第1希望 56.9%			第1希望 65.1%
第2希望 16.0%			第2希望 15.6%
第3希望  8.8%			第3希望  7.1%
第4希望  3.8%			第4希望  2.9%
第5希望  4.9%			第5希望  5.1%
第6希望  2.2%			第6希望  2.7%
記載なし  7.1%			記載なし  1.4%
(回収率約42%)			(回収率約38%)

配属地で修習するため,引っ越しが必要でしたか
はい   59.1%			はい 56.2%
いいえ  40.6%			いいえ 43.4%

【出典】
新第 65期司法修習生に対する生活実態アンケート資料
http://www.moj.go.jp/content/000103610.pdf
第66期司法修習生への修習実態アンケート資料
http://www.nichibenren.or.jp/library/ja/special_theme/data/syusyu_jittai_enquete_66.pdf

  (2) 分析
    第1希望・第2希望で収まる率が7~8割と,当職らの体感よりも高い印象がある。これは,新第65期からいわゆる貸与制が始まったことに由来するものではないかと分析している。
    しかしながら,引っ越しが必要な者も約6割程度いて,第1希望・第2希望で通った率とのギャップが見られる。
    一方で,第5希望・第6希望になる率も7~8%程度存在する。これも決して無視しえない数字である。
    「記載なし」が新第65期の7.1%から,66期の1.4%に減少しているが,これも貸与制の影響ではないかと思われる。
  (3) 対応
    思っている以上に,第1希望・第2希望で通る率は高い。一方,そうでなかった場合,第3希望・第4希望になる率と,第5希望・第6希望になる率は大差ない。したがって,第5希望・第6希望になる可能性も十分にあることを認識して,そのリスクを減らすような選択をすべきである。

 4 志望別各論
  (1) 志望する修習地が地方(特に3群)である場合
    第1希望に書けばほぼ決まるのではないかと思われる。その場合でも,第2希望以下には,隣接する修習地等を記載すれば盤石であろう。
  (2) 志望する修習地が1群である場合
    第1希望・第2希望が通らなかった場合に備え,第5希望・第6希望を吟味する必要がある。わざわざ1群が第1希望ということは,そこで就職したいからということであろうかと思われるので,志望が多そうな1群について傾向と対策を述べる。
   ア 札幌の場合
     第2希望~第4希望は他の4庁とするのが鉄板であろう。その段階で第5希望・第6希望になる可能性は相対的に低いものと思われるが,北東北あたりがベターか。
   イ 仙台の場合
     他の東北5県を記載すれば東北には収まる。
   ウ 東京・埼玉・千葉・横浜の場合
     北関東・長野・新潟あたりで第4希望までは埋めればよい。3群からのチョイスとしては,新幹線で出てきやすい山形や秋田あたりが定番である。いっそ,飛行機を使う前提で,山陰地方や四国あたりにするのも1つの方法ではある。
   エ 名古屋の場合
     第4希望までは困らないものと思われる。第5希望・第6希望は,福井と富山が鉄板と思われるが,前同様に,飛行機を使う前提で他の地方でもよいのではないか。
   オ 大阪・京都の場合
     ここも第4希望までは困らないものと思われる。第5希望・第6希望は,四国・山陰・北陸あたりから選択することとなろう。
   カ 福岡の場合
     近県で十分第6希望まで埋まるものと思われる。

サイ太の個人的な見解

   地方修習の方が,任官・任検しやすいという話は真実ではないかと思う。当職も地方修習であったが,裁判修習・検察修習ともに,濃度の高い修習であったように思われる。また,人数も少なく,全員と仲良くなることができた。大都市修習には大都市修習の魅力があるのかも知れないが,地方修習に行ってみてよかったと考えている。
   どうしても「東京じゃなきゃイヤ」という理由が諸君にあるだろうか。自問してみてほしい。

参考文献

   「実務修習地」とかでググると,先輩法曹のブログとかがたくさん引っ掛かるよ。